2021事務年度(21年7月~22年6月)の法人税実地調査の件数は約4万1千件で、前年度の約2万5千件から63.2%増加しました。それに伴い申告漏れ所得金額も6,028億円と、前年度の5,286億円から14.0%増加しています。コロナ禍が徐々に落ち着くなかで、控えていた実地調査を徐々に再開していることがうかがえます。ただコロナ禍前の18事務年度に比べれば調査件数は半分以下と、まだ完全復活ではなさそうです。
一方で実地調査以外の、書面や電話による連絡や来署依頼に基づく「簡易な接触」はコロナ禍で顕著な増加傾向にあります。21事務年度は約6万7千件で前年より微減したものの、その前の19事務年度に比べるとおよそ1.5倍。さらに申告漏れ所得金額は前年比116.6%、追徴税額で167.5%と、前年からも伸びています。思うように実地調査を行えないなかで、簡易な接触の増加によって実績を上げている形です。
法人に対する税務調査のなかでも、国税当局が特に重点的な取り組みとして挙げているテーマの一つが、消費税の還付申告を行った法人。消費税は、仕入れで支払った消費税額と顧客から受け取った税額を差し引きし、支払った消費税のほうが多い時には還付申告をすることで還付金を受け取れます。この仕組みを悪用し、架空の仕入れを計上するなどの手口で不正に還付金を取得する脱税が後を絶ちません。
21事務年度には還付申告法人に対して前年の約4割増となる4,252件の実地調査を行い、そのうちの約7割に当たる2,877件で申告額の誤りなどの非違を指摘しました。そのうち不正な計算があったと認定されたのは791件。不正であるかどうかにかかわらず、これらの実地調査1件当たりに課された追徴税額は873万8千円で、法人税調査全体の1件当たり追徴税額352万8千円の2倍以上の数字となりました。消費税の不正還付が当局にとって今最も狙い所となっていることが分かります。
<情報提供:エヌピー通信社>