与党は12月中旬に2023年度税制改正大綱を決定しました。かねてより予想されていた110万円贈与の持ち戻し期間の延長が盛り込まれた一方で、持ち戻しの対象にならない新たな生前贈与の非課税枠が設けられるなど、資産家の相続対策に大きな影響を及ぼす見直しが並んでいます。
生前贈与に関わる見直しで目を引くのが、相続時精算課税の大幅な拡充。これまでは同制度を適用すると110万円未満の贈与もすべて申告が必要で煩雑だったところを、110万円未満の新たな非課税枠を導入。しかも相続直前の贈与でも持ち戻しの対象にならないことから、従来の年間110万円までの暦年贈与に代わって相続税対策の新たな定番となる可能性があります。
また中小企業の節税策として活用されていたコインランドリー節税が規制されます。利益が多く出た年にコインランドリーを多数取得し、専門の業者に運営を委託したうえで、設備投資減税を駆使して税負担を抑えるというものですが、大綱では中業企業投資促進税制や中小企業経営強化税制といった法人税の優遇制度から軒並み除外されました。
10月にスタートするインボイス制度に向けては、免税事業者から課税事業者に転じた際に3年間税負担を軽減する特例や、1万円未満の少額取引を当面インボイス不要にする救済措置が導入されます。またインボイス制度のスタートに合わせて登録事業者となるための申請期限は3月末ですが、中小事業者の対応が進んでいない現状を受けて、4月以降の申請にも柔軟に対応する旨が盛り込まれました。
現在は2年間の宥恕措置が認められている改正電帳法についても、宥恕措置の終了後もデータで受け取った領収書などの紙保存が認められることとなりました。大綱の内容は通常国会での議論を経て3月末に成立する見通しです。
<情報提供:エヌピー通信社>