「ペイペイ」や「楽天ペイ」など、企業が従業員の給与をスマートフォンの決済アプリ口座に入金する「給与のデジタル払い」が来年春に解禁されます。厚生労働相の諮問機関「労働政策審議会」が10月下旬に了承しました。デジタル給与の取り扱いを希望するアプリ事業者の申請を来年4月から受け付け、労働者が実際に利用できるのは、その数カ月後になる見通しです。
労働基準法は賃金を原則として現金で支払うよう定め、従業員の同意があれば銀行口座に振り込めますが、今後は決済アプリを通じた支払いも認めます。取り扱い事業者は、破綻時に支払いを保証する仕組みなどを審査した上で厚労相が指定します。
デジタル払いは従業員の同意が条件で、企業側は強制できません。口座残高の上限額は100万円。労働者はそのまま買い物や家族への送金に利用できるようになります。これを上回る額が入金された場合は、あらかじめ決めておく銀行口座へ当日中に移されます。月1回は、現金自動預払機(ATM)で手数料なしに引き出せるようにします。政府は成長戦略としてキャッシュレス決済の普及を目指していて、企業による幅広い活用を期待しています。
企業側にとっても、現金での手渡しや銀行口座への振り込みに比べてコストが低くなり、1日分や1週間分の給与を即座にアプリに入金するといった柔軟な支払い方が広がる可能性もあります。短時間勤務や非正規雇用、海外から来て働く人など多様な働き方に対応できるようになりそうです。
ただ、決済アプリなどの事業者は銀行と違って歴史が浅く、破綻した場合の担保やセキュリティ面などの不安は残ります。労働者が安心して利用できるような制度設計が求められているところです。
<情報提供:エヌピー通信社>