来訪客を対象に100円を徴収する「宮島訪問税」につき、広島県廿日市市は来年10月1日に徴収をスタートすることを決めました。観光客のみを対象とする税金の導入は全国で初めて。コロナ禍により自治体の財政悪化が深刻化するなか、これまで賛否あった観光税の導入が一気に加速する可能性もありそうです。
宮島訪問税は、来島者の9割が利用する宮島口フェリー旅客ターミナルで、運賃に1回100円を上乗せして徴収するもの。宮島口以外から島に渡る来訪客については、船の運航事業者に委託して徴収するとのことです。また年間500円を一括納付すれば、無制限に入島できるようにします。納税対象から除外されるのは、宮島の住民、宮島内で働く出勤者、学生や児童および学校イベントに参加する保護者など。
同市によれば、来島者数がコロナ禍以前の水準まで回復すれば年間3億円以上の税収が見込めるそうです。確保した財源はトイレなど観光関連施設の拡充や渋滞対策、ごみ処理などへの活用を計画します。
市民の高齢化や若年層の流出などにより、廿日市市の税収はピークだった07年度の169億円から14年度には156億円まで減少。一方で社会保障費が07年度の62億円から14年度に105億円まで膨張したことがきっかけとなり、入島税導入へ向けた議論が始まった経緯があります。
松本太郎市長は入島税の導入を公約に掲げて19年10月に初当選。就任後は入島税による収入を施設整備に充てることをアピールし、来島者を対象に実施したアンケートでも導入賛成が9割を超えました。船舶運賃に上乗せする入島税は、これまで伊是名など沖縄県の4村ですでに導入されてきましたが、公平性を保つという理由で原則として島民からも徴収してきました。観光客だけに課税するのは廿日市市が全国初となり、今後はこうした仕組みが全国に拡大する可能性も十分にあります。
<情報提供:エヌピー通信社>