中小企業庁がこのほどまとめた最新の中小企業白書では、後継者が見つからない経営者がM&Aに踏み切ろうとした時に、最大の障壁となるのが社員や関係者に対する「後ろめたさ」であることが示されました。一方、買い手にとっての障壁は、期待する効果が得られるかがわからないことでした。経営者の高齢化に伴い、国にとって中小企業の事業承継対策が喫緊のテーマとなるなかで、こうした売買双方にとってのハードルをどう解消していくかが今後の課題となりそうです。
白書によれば、2021年の企業のM&A件数は過去最多の4,280件。これはあくまで公表されている件数で、未公表のものも含めると、M&A市場はさらに活性化しているとみられます。そのなかでも中小企業のM&Aに絞ってみると、東証一部上場の大手仲介3社と事業承継・引継ぎ支援センターの関与件数だけでも2,139件に上ります。
M&Aの実施意向のある企業に、相手先企業の探し方を聞くと、「金融機関」が最も多く、以下「専門仲介機関」、「自社で独自」、「公認会計士、税理士など」と続きました(複数回答可、以下同)。また買い手企業がM&Aを実施する際の障壁では、「期待する効果が得られるかよく分からない」が35.5%で最も多く、「判断材料としての情報が不足している」32.8%、「相手先従業員等の理解が得られるか不安がある」32.3%、「仲介等の手数料が高い」27.7%と続きました。白書では、こうしたハードルを解消するためには「支援機関による調査などを有効活用し、情報収集や判断の助言などのサポートを受けることが重要」だとしています。
一方、M&Aの売り手側企業にとっての障壁は、「経営者としての責任感や後ろめたさ」が30.5%と最も多くなっています。M&Aに対するマイナスなイメージは以前よりは払拭されつつあるものの、今でもM&Aで会社を売り渡すことを「後ろめたい」と感じる経営者が多い実態が浮き彫りとなりました。次いで多かったのは「相手が見つからない」28.1%、さらに「仲介等の手数料が高い」26.5%と続き、実務的な理由からもM&Aをしたくてもできない事情がうかがえる結果となりました。
<情報提供:エヌピー通信社>