国税不服審判所は、2020年10月から12月分の裁決事例を、同審判所ホームページ上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し、公表しております。
今回公表された裁決事例をみてみますと、6事例(国税通則法関係2件、法人税法関係3件、相続税関係1件)が挙がっております。
なお、今回は全部取消し1事例をはじめ2事例において納税者の主張の何らかが認められております。
例えば、全部取り消しとなった法人税法関係の、請求人が請求人の元代表者に退職金として支払った金員は、当該元代表者に退職の事実があるから、損金の額に算入されるとした事例が挙がっております。
請求人の代表取締役及び取締役を辞任した元代表者が、辞任後も継続して請求人の事業運営上の重要事項に参画していたとは認められず、請求人を実質的に退職していなかったとは認められないとしました。
元代表者に対して支給した退職金の金額を損金の額に算入して法人税等の申告を行いました。
しかし、原処分庁は、請求人の元代表者が、退職後も引き続き請求人の経営に従事しており、みなし役員に該当するから、実質的に退職していないとして、請求人が元代表者に支払った退職金の金額は、法人税法第34条第1項括弧書き所定の退職給与に該当しない旨主張しました。
裁決は、原処分庁がその認定の根拠として摘示する各事実には、その裏付けとなる退職当時の客観的な証拠がなく、各関係者の各申述においても、元代表者の請求人への具体的な関与状況が明らかではなく、元代表者は退職後に請求人から報酬等を受領していないと認められ、元代表者の退職後に請求人の代表取締役となった者が、その代表取締役としての職務を全く行っていなかったと認めるに足りる証拠もないと指摘しました。
元代表者が、本件辞任後も継続して、請求人の事業運営上の重要事項に参画するみなし役員に該当し、請求人を実質的に退職していなかったと認めることはできないほか、金員が退職給与として損金の額に算入されないと判断すべきその他の事情もないことから、金員は、退職給与として、請求人の損金の額に算入されるとして、原処分の全部を取り消しました。
(注意)
上記の記載内容は、令和3年8月6日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。