法人税法上、不相当に高額な役員退職金は損金算入が認められておらず、合理的な金額であれば損金として認められます。
不相当に高額として損金不算入とされた金額は法人税法上の経費とならないため、損金不算入となった役員退職金分には法人税が課税され、退職者には退職所得に対して所得税が課税されますので、役員退職金の適正額の算定方法には注意が必要です。
適正とされる役員退職金の算定方法にはいくつか種類がありますが、「平均功績倍率法」が一般的です。
「平均功績倍率法」は、「最終報酬月額×勤続年数×類似法人の平均功績倍率」をもって退職金を算定しますが、計算要素のひとつである最終報酬月額が0円だった場合や、最終的に非常勤等で役員報酬が極端に低いケースもあります。
役員報酬を業績が良い時は上げて、悪い時は下げるなど、たまたま退職時点で業績が悪化したため役員報酬を引き下げたケースや、業績の波が大きい中小企業の社長では、下げ幅も大きく、退職時点では役員報酬が0円であったケースも少なくないといいます。
したがって、「平均功績倍率法」は、あくまで一般的な退職金の算定方法としては合理的ですが、税法上、この方法が唯一のものというわけではありません。
他の算定方法としては、過去に役員退職金を支給しているのであれば、過去の役員退職金の支給実績に基づいて算定する方法や、実際の裁判例では、「平均功績倍率法」ではなく、「1年当たり平均額法」を採用したケースもあります。
これは、「類似法人の退職した役員の勤続年数1年当たりの平均退職給与の額×勤続年数」をもって、退職金を算定する方法で、この方法により最後の役員報酬が著しく低くても妥当な退職金を支給できるとされております。
上記の裁判例のように、法人税法上は役員退職金の支給額については画一的に考えるのではなく、法人の業務に従事した期間、その退職の事情、同種・類似規模の法人の役員退職給与の支給状況等を総合的に勘案した上で、合理的に算定するということが重要です。
なお、退職金規定を作成して功績倍率を定めておくことで、恣意性を排除し税務署等への説明根拠とすることもできるといわれております。
(注意)
上記の記載内容は、令和3年6月1日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。