相続で取得した減価償却資産は、特殊な事例を除いて殆どが中古資産です。この中古資産について、取得価額について明文の規定はありますが、耐用年数については規定がありません。
そこで、減価償却資産の耐用年数等に関する定めを適用して算出した耐用年数、いわゆる中古資産を取得した場合の簡便法(当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に経過年数の2割に相当する年数を加算したもの)が適用できるかどうかです。
結論は、「相続により取得した減価償却資産には中古資産の耐用年数の簡便法は適用できない」です。高裁まで争われましたが、その論拠は次の(1)、(2)です。
(1)取得日及び取得価額の引継ぎ規定
譲渡所得の計算において、相続・贈与等で取得した資産を譲渡した場合には、その者が引続き当該資産を所有していたものとみなす、とする「取得日の引継ぎ」規定があること。
それと平仄を合わせるように、相続・贈与等で取得した減価償却資産の取得価額についても、その者が引続き所有していたものとみなした場合における当該減価償却資産に所定の償却に関する規定を適用して算出された場合の取得価額に相当する金額、とする規定があること。
そして、これらの規定の趣旨を勘案すると、取得価額のみならず、償却費の計算に当たり必要となる耐用年数及び残存価額も前所有者から取得者に引継がれると解すべきであるとしています。
(2)耐用年数簡便法の適用場面
中古資産を取得した場合の耐用年数簡便法の適用趣旨は、中古資産によって経過年数も様々で、これに一律の耐用年数を設定することは無理であることから特別に定めた規定であり、中古資産を取得した時点における取得価額を当該取得後における使用可能期間等に償却費として配分するために設けられた規定であること。
そして、相続等により取得した減価償却資産については、取得者は前者の新品としての取得価額を引継ぐことになり、この取得価額に対して通常の法定耐用年数が適用されるのであって、相続等による取得の時点で取得価額が発生することはないから、簡便法の適用の余地はないとしています。