大手レコード会社「ユニバーサルミュージック」(東京)が組織再編に絡む約58億3850万円の課税処分の取り消しを求めた裁判で、東京高裁は処分を取り消した一審判決を支持し、国側の控訴を棄却しました。国は課税処分に際して、〝伝家の宝刀〟とも呼ばれる法人税法132条「同族会社の行為計算否認規定」を適用しましたが、一審に続き二審でも正当性を否定されたかたちです。

 同社は2008年に行ったグループの組織再編において、前身の法人など3社の全株式を買収し、吸収合併する形で設立されました。問題となったのは、その際にグループの国外法人から借りた約866億円です。

 同社は支払利息を損失として計上しましたが、東京国税局は「日本国内の音楽事業に実質的な変化がなく、一連の再編は所得を圧縮する目的で行われた租税回避だ」と指摘。損金算入を認めず、約181億2400万円の申告漏れがあったとして、計58億円超の追徴課税を決定していました。

 同社の一連の行為は、税法になんら触れるものではありません。にもかかわらず申告漏れと認定されたのは、法人税法132条に定められた「同族会社の行為計算の否認規定」によるものです。同規定は、法人税の負担を「不当に減少」させる税務処理については、当局が税額を再計算できると定めています。つまり合法の範囲内で行われた処理でも、それが租税回避目的と認められれば否認できるということです。

 税務処理が租税回避目的かどうかは、具体的には、「経済取引として不合理・不自然であるか」で判定されることとなります。つまり当局は、同社の組織再編を経済取引として不合理であると判断したわけですが、司法の判断は違いました。

 法人税法132条に定める行為計算否認規定は、税法にのっとった税務処理であっても否認できるというその使い勝手の良さから、国税の「伝家の宝刀」と呼ばれています。しかし近年、この宝刀を巡り、国税の敗訴が続きます。16年には、IBM社の連結納税制度を利用した税務処理を法人税法132条を使って否認したものの、最高裁まで争って敗れています。今回のユニバーサル社を巡る裁判では、まだ上告が残っているものの、負ければ、〝刃の鈍り〟は決定的なものとなりかねません。
<情報提供:エヌピー通信社>